「ノートパソコンをお譲りします」
ある日突然、こんなことが書かれたチラシが自宅のポストに入っていたり、新聞の折り込みチラシとして届くことがあります。
今回はこの「JEMTC(ジェムテク)」という団体が行っている「パソコン譲渡会」というものについて考えてみたいと思います。この会場で提供されているパソコンは適正な価格で十分に使えるのかなどを、パソコン系メディア運営者の立場として考察していきたいと思います。
結論から言えば「買わないほうがいい」と判断しました。
もし格安のパソコンをお探しであれば、ページの最後でおすすめできる中古パソコン専門ショップをまとめていますので参考にしてみてください。大体内容は分るという方はページ下部までジャンプしちゃってください。
中古品販売ではなく「ノートパソコンお譲りします?」
まず、表現について少し気になった部分があります。
- ノートパソコンを販売する。
- ノートパソコンをお譲りする。
- ノートパソコンを購入する。
- ノートパソコンを持ち帰る。
うまく言葉の「あや」を使ってるような気がします。
『中古販売』というよりも『譲る』と言うほうがなんだか安い?もしかして無料なの?という印象を受けてしまう方も多いと思われ、そういった意味合いで伝わるように狙っているのかもしれません。批判するわけではありませんが、個人的にこの言い回しは好きではありません。
販売ではなくちっっっさい文字で“有償譲渡”と書かれているなど結構こだわってますね。あくまでも販売ではなく譲渡、購入ではなく持ち帰るという表現が用いられています。
“譲渡”されているパソコンは適正価格?
僕自身こんなサイトを運営していることもあり、パソコンのスペックのリストを確認すればおおよその価格や「このパソコンで何ができて何ができないか?」という事まで分かります。このようなイベントで“譲られる”パソコンの値段は適正価格なのでしょうか?
チラシに記載されているパソコンの性能と値段をしっかりと確認してみることにします。
公開されているスペック
チラシの中で公開されているパソコンは大きく2種類のスペックで分かれています。まずは「初心者の方でもお持ちかえり後にすぐお使いいただける機種」と記載されている方を『パターン①』とさせていただき公開されているスペックをまとめます。
パターン①
- メーカー不問
- 画面が大きい15.6インチ
- Windows10
- メモリ2GB
- 容量250GB~
- 2年保証
26,000円(税抜き)
=28,080円
次に「操作に慣れた方や事務所でのお仕事に適した機種」と記載されている方を『パターン②』とさせていただき、同じく公開されているスペックをまとめます。
パターン②
- メーカー不問
- 12.1~15.6インチ
- Windows10
- メモリ4GB
- CPU core i3
- 容量250GB~
38,000円(税抜き)
=41,040円
公開されている情報はこれだけです。パソコンのスペックがわかる人が見れば「不明な点が多いのでは?」と感じてしまう方も多いと思います。正直、これだけの情報で販売されているパソコンが高いのか安いのかを判断することができません。
高いほうのパソコン(パターン②)で疑問を全部ぶつけてみることにしましょう。安いほう(パターン①)は、あくま僕自身の意見とはなりますが、ちょっとひどいのではないでしょうか。低性能すぎます。
パターン②のスペックを見た率直な感想
- メーカー不問
→メーカーによってデザイン、特性が違うので確実に分けてください。 - 12.1~15.6インチ
→好きなサイズを選べるのならGOODです。ランダムの場合はダメ。 - Windows10
→販売するなら現在Windows10は当たり前。Windows7だったら大問題。 - メモリ4GB
→現環境では8GBが最低ラインですね。パターン①の2GBではまともにパソコンとして動かないことも考えられます。Windows10アイドル時で1.4GB程度使うので2GBでは動作は常にもさもさです。 - CPU core i3
→1番引っかかるのはココ!CPUの世代が分からないと性能はわかりません。
参考までにCPU単体で1世代core i3は1000円程度で購入可能。9世代core i3だと3万くらいすると思います。
運が悪ければ1世代2世代あたりの低スペックCPUを搭載したパソコンを買わされるということでしょうか?
また、同じcore i3でも省電力版やハイパフォーマンス版など種類も多くあるので、まったくスペックが予想できません。 - 容量250GB~
搭載されているのはSSDですか?HDDですか?そもそも何の容量なのか書いていません。たぶん保存領域(ストレージ)だと思うので、『ストレージ容量』くらいの記載はすべきだと感じました。
いいとこは褒め、悪いところは指摘しました。
上記の理由(曖昧すぎな表記)によって正確に高い!安い!の判断は困難です。ぱっと見でわかるのは、家電量販店の最新モデルと比べると安い。といった感じでしょう。
チラシの裏面には同意書をしっかり確認してみた
スキャンだと見にくいので文字にしました。
同意書の内容
- 返品可能期間はお持ち帰りから10日間です。
- パソコンの操作方法に関するお問い合わせは、機器性能証明書の裏面記載のサポートダイヤルにご連絡下さい。
- 内蔵バッテリーは充電機能を有しません。一台ごとにお渡しする電源ケーブルを必ずお使いください。
- 内蔵バッテリーの消耗を理由とした返品はお断りします。
- お譲りする機器は、家電量販店に陳列される個人モデルではなく、企業モデルのリース期限が終了した再生パソコンです。
- 新品同様の要求をされる(キズ等の外観・デザイン等)方の持ち帰りはお控え下さい。
- インストール済みのオフィスソフトは、WPS OFFICE 正規認証版です。 WPS OFFICE 正規認証版(ワープロ・表計算・プレゼンソフト)およびその他アプリケーションは付属品です。それらを理由とする返品はお断りします。
- 保証期間2年間は、機器不具合による故障(個人データの破損・紛失は対象外)は無償修理を保証します(送料は 個人負担)。お譲りを受けた方の過失による修理は、保証期間内でも部品代・送料は自己負担となります。
- ネットから の不正ソフトダウンロード、ウイルスの侵入、落下、破損、液体を浴びたことによる故障その他使用者の過失による 故障も個人負担となります。
- ご自身でウィンドウズ10へアップグレードされたパソコンにおきましては、整備・点検状況が確認できないため、保証期間内であっても保証できない場合があります。有償譲渡会でお渡しするウィンドウズ10機種は1年間保証対象です。
- 譲り受けるにあたり、マイクロソフトMRR認定事業者が使用者に代わり、マイクロソフト ソフトウェアライセンス条項 及び各種ソフトウェアライセンス条項に同意し、インストールを承諾することに同意します。
気になる点が3点あり、赤線を付けました。
同意書に記載されていた内容で少し引っかかる部分
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内蔵バッテリーは充電機能を有しません。一台ごとにお渡しする電源ケーブルを必ずお使いください。
ノートパソコンとしての最低限の機能を有していません。バッテリーの劣化具合は保証の対象外になるという中古市場はわきまえていますが、『内蔵バッテリーは充電機能を有しません。』と書かれてしまっては、何のためのノートパソコンだよ!と突っ込みを入れたくなるレベルです。
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インストール済みのオフィスソフトは、WPS OFFICE 正規認証版です。 WPS OFFICE 正規認証版(ワープロ・表計算・プレゼンソフト)およびその他アプリケーションは付属品です。それらを理由とする返品はお断りします。
公式からの抜粋ですが、キングソフトのWPS OFFICE 正規認証版はしっかり5,000円という金額が付いているんですよね。付属品ではなく商品の1部だという認識ではないのでしょうか?
5,000円払ったソフトに対しての不良は無視されるということなのかもしれません。
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ご自身でウィンドウズ10へアップグレードされたパソコンにおきましては、整備・点検状況が確認できないため、保証期間内であっても保証できない場合があります。
この記載があるということはWindows7や過去のOSを搭載したパソコンを販売する可能性があるということですね。
Windows7のサポート終了まで1年を切りましたが、セキュリティがなくなったサポート切れのOSを使い続ける以外に道はないということなのでしょうか?
『現在お譲りしているパソコンのOSは、ウインドウズ10になります。』との記載が公式に載っているので、この項目は消すべきなんじゃないかと思います。勘違いが生まれてしまいます。
Windows7のサポートは2020年1月14日までとなっており、2019年8月24日現在の執筆です。(公式からの引用も同日です。)
※現在Windows7のサポートは完全に終了している状況なので、Windows7を搭載したパソコンを販売していることは無いと考えられます。(詳細の確認はできませんでした。)
譲渡会に参加した方々の評価はどう?
ほかのブロガーさんの記事から抜粋させていただきます。
『ある記事によれば、中古市場価格の倍くらいの値段で売っているそうです。
ただ、それなりに人件費をかけているようで、一概に詐欺まがいとも言えないようですが。やはり集まってくる人の多くが、お年寄りのようです。
それと、実物を見て買うことができないらしく、CPUi5、メモリ2GBなどという塊から、渡される感じになるようです。
結構、息子や孫用に買って帰るというケースが多いようですが、小中学生が初めてPCをもつならいいかもしれません。しかし、ある程度自分で選びたがる年齢になると、コレジャナイロボのようなことになりかねないですので、気をつけたいものです。』
『いよいよ譲渡会がスタート。会場後方に並べられたPCを、参加者が直接触って検討できるシステムのようです。お客さんがPCの前に集まり、ちょっとした人だかりが起こっています。
“譲渡”してくれるPCがどんなものかと見て回れば「Celeron メモリ2GB 160GB」の富士通製ノートパソコンが税込2万6000円、「Corei3 メモリ4GB 160GB」のNEC製ノートパソコンが3万8000円などといったラインナップ。あれ、家電屋さんの表記と違って、どこかに違和感があるような……?
「CPUの種類だけが表記されており、型番の表記がありませんね。この書き方ではどのCPUが使われているか、説明していることになりません。同じi3でも2008年製のものと、18年製のものでは、性能に雲泥の差があります。これは11年製の第2世代で、8年前の型落ち。iPhone4をiPhoneと言って売っているようなもの。なぜ誰も疑問に思わないのか、不思議です」』
『livedoorNEWS』様
『マルチ臭いとかいろいろ書いてしまいましたが(ホントすいません)、主催はJEMTCという協会です。うさん臭さもなく健全な協会で、大量廃棄されるリースパソコンなどを再生して譲渡会などをしている至極まっとうな企業のようです。
いきなり下調べもせずに譲渡会から参加してしまうと、マルチ勧誘のセミナーみたいでちょっとやばい雰囲気も感じてしまうのは仕方ないかもしれません。でも、天下のサンテレビが後援する協会です。問題なんてありません!
ネットで検索してみると、中古のPCってピンキリで、正直今回のスペックが値段相当だったのかは不明です。ですが、リサイクルサークルのなかでの投資、と考えれば、少しくらいお布施の上乗せでもいいのかな、と思ってしまったりしまわなかったり。』
『迷走オヤジの独り言』様
いい意見も悪い意見も混在していますが、悪い面ばかりではないようです。その場に行った方がどう思うかや、パソコンに対しての知識量で感想がかなり変わりそうですね。
特定の人には有効な販売所となっているよう
しかし、情報を集めるうちにもしかするといいのでは?と思うポイントも発見できました。
「家電量販店の新品を買うしかパソコンを入手する手段を知らない人」にとってはパソコンを格安で購入できる場所であることに間違いはありません。
- パソコンが欲しいけど、スマホもないから調べることができない。
- ネットしか見ることは無いから、どんなものでもいい。
- パソコンを買うとなったら10万円超えは覚悟しなければ。
主に、このように考えるであろうおじいさんおばあさん世代のご自宅に「パソコンが2万円~3万円!」と書かれたチラシが届けば、それが助け舟になった人もいるのではないかと思います。
パソコンが欲しいけどネット環境もなく、安い中古パソコンの存在を知らない(調べることもできない)人にとっては本当に良いサービスなのかもしれません。なぜなら、パソコンの最低価格が家電量販店の10万円オーバー価格だと感じる人がいるからです。
ネットではあまり譲渡会の情報はなく、チラシ投函というやり方もネット注文はできない方への配慮なのかもしれません。そう考えれば『最低限パソコンとして動作する』ものが家電量販店よりも安価で手に入るのは良い部分といってもいいでしょう。
譲渡会でパソコンを購入すべき?
最終的に譲渡会でパソコンを購入すべきなのか?という最大の疑問点。
ズバリ、買わないほうがいい。
というのが最終的な判断です。
譲渡されているパソコンのスペックを確認し、相場よりも高いのか安いのかが不明と解説させていただきましたが購入者の声を聞き、そこから確認できた情報をネット上の中古相場と比較したときに「市場の相場よりも高くつく可能性のほうが高い」と判断しました。
また、「スペック等が詳細不明なものに手は出さないほうがいい」なんてことは当たり前です。
何よりこのページを今読んでいる皆さんは、現時点でネット上で調べる事が出来ていますよね。
譲渡会のターゲット層
そもそも譲渡会のターゲット層を考えてみてください。
ネットを使ったこともなくパソコンの適正価格を知らない人や、パソコンの世代などの性能差を気にせずに最低限の『パソコン』という機能を手に入れたい人に限られます。
このページまでたどり着いた人は最低限のネットの使い方を心得ている人ということになるので、ネットでもっと安くて快適動作が期待できるコスパの良い中古のパソコンを選びましょう。
新品ではなく、格安中古で検討するならこんなショップがおすすめです
僕自身が新品ではなく中古パソコンを購入するので、コスパの良い中古パソコン専門ショップをまとめてみました。
おすすめショップと簡単な特徴 | |
OraOrA ! | 普段使いからゲーミングPC、Mac系まで取り扱いの幅が広く、商品点数も多い。 Microsoft Officeの取り扱いがない事以外は本当に欠点がない。 |
Qualit | 販売されているノートパソコンはバッテリーが80%以上で劣化が少ない。 (Apple製品・アンドロイド製品・バリュー品を除く) 保証も12ヵ月と中古パソコンとしてはものすごく長い。 良いパソコンがありすぎるせいか、欠品が目立つ。 |
デジタルドラゴン | 運営元がBTOメーカーのパソコン工房。 中古版BTOショップのような立ち位置で、中古パソコンをカスタマイズして購入できる。 パソコンパーツとして寿命が短いとされているストレージを新品に換装しての購入がおすすめ。 今回紹介する中ではMicrosoft Officeが最も安い。 |
PC next | 商品点数が少ないものの、中古パソコン1年保証+15日間の返金保証を完備した珍しいショップ。 販売しているパソコンのすべてが Core iシリーズ+SSD+8GB以上のメモリを搭載している。 パソコン初心者でも選びやすい。 |
ジャンクワールド | 性能に対してパソコンの価格が最も安い傾向にある。 ただ、低スペックなパソコンでもゲーミングとして販売されている点などに注意が必要。 パソコンのスペックを理解できる方向けのショップ。 |
イオシス | スマートフォンの販売がメインだが、比較的新しい世代のノートパソコンが多く並んでいる。 どちらかというとパソコンよりも中古のApple製品を専門としているショップ。 別ページで紹介している中古iPadのおすすめ購入先としては最有力ショップ。 |
Be-Stock | 中古のパソコンに標準で1年保証が付き、追加オプションで最大3年保証を付けることができる。 中古パソコンでも長期保証は譲れないという方におすすめ。 各オプションやMicrosoft Officeの価格は少し高め。 |
僕が普段利用するショップも含めたおすすめできる6店舗です。10日間のように短期ではない3ヵ月から1年保証が付いていたり、譲渡会では5,000円で販売されていたキングソフトWPS Officeが無料でセットになっていたりと至れり尽くせりです。
また、チラシではなくオンライン販売なので、誰でも確認できる場所で詳細なスペックが公開されたうえで必ず適正価格で販売されています。
各ショップの特徴を簡単にリスト化してありますが、比較などの詳細はコチラのページにまとめてあります。
パソコン選びは慎重に!
中古パソコン市場はパソコン製造メーカーではなく、中古ショップや個人が自由に価格を設定できてしまうため、いわゆる『ぼったくり価格』が可能となっています。
ですから、一部のコミュニティ内で販売されている物ではなく、誰でもいつでも値段を確認できるネット上で販売されている物を選ぶことで適正価格購入できる可能性が高くなります。
また、中古であろうともしっかりと3ヵ月以上の保証のあるものを選ぶようにすると初期不良などに対応できるため安心できます。